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本ページは、医師を対象に高齢者総合機能評価を実施するための資料を掲載しています。

高齢者総合的機能評価(CGA)の実施法

本評価法は、日本老年医学会が実施している「高齢者医療研修会」の実施内容に基づき作成しています。本項は、上記研修会を目的で作成しており、高齢者の総合機能評価に必用な様々なツールがダウンロードできます。

■はじめに■

 「総合評価加算」には、一定の決まった方法はなく、個々の症例に応じて必要な総合機能評価を実施して問題点を抽出し、その対応・対策を文書に記載し、患者さん本人、ご家族にお渡しすることが診療報酬算定の要件になっています。

従って、「総合評価加算」を得るためには

  1. 必要な総合機能評価を実施する

  2. 患者さんに必要な対策を策定する

  3. 以上の結果を文書にする、という作業が必要になります。

CGAには決まった方法はありません。本ファイルに記載しております方法は、私流の方法です。

「本ファイルに記載してあるから保険請求は大丈夫である」との認識は必ずしも正しいとは限らないことをご了解ください。

■ 実施手順 ■

 Step 1. CGAを実施する 

■全員に最初に実施する事項です

項目によっては、「質問用紙」、「入院時のお伺い」などとして予め記載していただくのも一法です。

「要介護状態」、「フレイル」の症例が総合評価の対象になります。

  1. 急性疾患合併時は、急性期を離脱後に実施する

肺炎・脳梗塞・心筋梗塞などは急性期を離脱した段階で実施します。

2.対象症例が要介護状態でなく、「フレイル」かどうか不明の場合には簡易的総合評価を実施します。

簡易的総合評価には「CGA7」、「国立長寿方式」、「Dr.SUPERMAN」などがあります。

予約入院などでは、認知機能・うつ状態以外の質問は、入院中に持参していただく質問票に追加するなどの対応も考えられます。

3. 簡易的総合評価が満点の場合→「フレイル」ではないと判断し、総合評価が実施しない(終了する)。

満点でない場合→以下を参考に問題のある事項について評価をおこなう。

■以上の作業で問題があった場合に、以下のどれを実施するか検討します。

複数を選択することが一般的で、最後の「計画作成」のために実施することを念頭において選択するのが留意点です。

4. 基本的ADLの障害が疑われた場合

基本的日常生活動作能力検査:Barthel Index またはKatz Index

5. 手段的ADL・社会的ADLの障害が疑われた場合

手段的日常生活動作能力検査:Lawton & Brodyまたは老研式活動能力指標

6. 認知機能の障害が疑われた場合

MMSEHDS-Rこれらの一括評価、または柄澤式

7. 意欲の障害が疑われた場合

Vitality index

8. うつ傾向が疑われた場合

GDS15 、またはGDS5

9. 栄養障害が疑われた場合/ 血清アルブミン値<3.5 g/dlの場合

MNA

10. 転倒リスクのある場合

転倒スコア

11. 閉じこもり傾向のある場合

閉じこもり評価票

12. 問題行動のある場合

DBD

13. 介護負担のある場合

Zarit

14. QOLを評価する必要のある場合

モラールスケール、またはSF-8

■ 参考:CGAの大まかな分類■

比較的頻度の高い「ADL障害」、「認知機能障害」「情緒・気分障害(うつ傾向)」に分け、

各々について「問題あり」とされた場合に、比較的よく実施されるCGAを以下に示します。

1)「日常生活動作能力検査(ADL)」に異常のある場合

  • 手段的日常生活動作能力検査(Instrumental ADL):

Lawn & Brodyまたは老研式活動能力指標

2)「認知機能」に異常のある場合

3)「情緒・気分」に異常のある場合

 

 

 Step 2. 今後の医学的対応を立案する 

 

入院時の「入院診療計画書」の内容などがこれに該当します。

書式は、文末の日本老年医学会の資料を参照ください。

 

 Step 3. 総合評価を記載して本人・家族に渡す 

 

1. Step 1で実施したCGAの問題点を整理します。

2. 整理した結果を、以下に分類します

(1) 対策を講じることが出来ない事項

例:アルツハイマー病による記銘力低下の改善

(2) 対策を講じることにより増悪を防止できる可能性のあるもの

例:脳梗塞後遺症の麻痺側の拘縮予防

(3) 対策を講じることにより改善する可能性のあるもの

例:うつ状態への治療

3. 2で整理した内容に基づき、今後1~2か月で患者さんにどのような働きかけをするかを時系列で記載して渡します。

 

■ 記載例を示します。少し長いですが症例によって調整して下さい ■

 記載例1:アルツハイマー病の入院時のCGA 

 「もの忘れ」を主訴に受診した83歳の女性。夫と死別した半年前から「もの忘れ」が増悪。

近医でアルツハイマー病の疑いでアリセプト3mgを開始され、精査目的に紹介入院。

既往歴に特記事項なし。身体所見に特記事項なし。血液生化学検査に異常なし。

入院時に実施した頭部MRIで海馬萎縮、SPECTで後部帯状回の血流減少を認め、いずれもアルツハイマー病に一致する所見を得た。この時点で実施したCGAに基づき以下の計画を立案した。

 認知症(アルツハイマー病)で日常生活動作に障害があり、ご家族に介護負担を認めます。

入院中に以下の対応を行い、このような問題点が改善するか観察したいと思います。

  • 洋服は、着替え方法が同じで簡単なものに統一していただき、着替えを自立に導く。

  • 排尿・排便について大体の時間を把握し、トイレに誘導する時間を決める。

  • 徘徊傾向に対しては、昼間にリハビリテーションをしっかり施行し、早目に就寝することで対処。

すでに薬物療法が開始されており、吐気などの副作用を認めませんので、薬物療法はこのまま継続し、症状や海馬の萎縮などを定期的にチェックしたいと考えています。

 記載例2 :上記のアルツハイマー病の退院時のCGA 

 着替えは「見守り」が必要ですが、ほぼ自立しています。速度は遅いですが、なるべく「手だし」をせず見守って下さい。

排尿は2時間毎、排便は起床時と夕食後に設定しています。いずれも「私と一緒にトイレまで行きましょう」と声かけ一緒に行っています。退院時には、ほぼ失禁はなくなっています。

リハビリテーションは、午前中は計約1時間の歩行や階段昇降訓練、午後は集団での散歩、合唱、体操などを計1時間強実施しました。合間には、テレビやビデオを見せて昼寝をしないようにしました。入院中は徘徊の様子はなく、夜間の入眠も速やかでした。退院後は、デイケアや在宅リハビリ等で同様のリハビリを実施されることをお勧めします。

 以上の改善により、問題行動も減っています。ご自宅での生活の場での問題行動の再評価をいただくとともに、介護負担度についても、担当医に再度ご検討いただいてください。

認知症の程度に変化はありませんでした。入院期間が短いためと思われ、退院後もゆっくりと認知症は進行すると思われます。患者様の症状に応じた対処が必要となりますので、担当医やケア・マネージャーなどにご相談されながら介護をお願いします。

 薬物療法は継続しています。入院期間が約1か月と短かったので、海馬の萎縮については明らかな変化はないと思われ入院中には検査しませんでした。上記のように様々な改善を認めていますが、アルツハイマー病自体は進行性の疾患です。ご家族を含めた周囲のスタッフの対応で改善するものと、進行するものがあることを御理解いただきたいと思います。

 記載例3: 陳旧性心筋梗塞による心不全のCGA。NTHA3で退院した患者さんの再来時のものです。

 心不全の治療のために使用している利尿薬の影響で軽度の脱水を認めました。心不全の程度は退院時よりも改善していますが、脱水が悪化すると腎機能をはじめとする体の負担を招くことになります。このため、利尿薬を少し減量したいと思います。場合によっては心不全が悪化する場合があります。

 以下については外来でも説明しましたが、念のために記載しました。

ご家庭で、現在と同様の15m程度の歩行を継続していただき、退院時のように「動悸」や「息切れ」などの症状がでましたら、まず安静にし、それでも症状が続く場合にはニトロズリセリンを舌下使用して下さい。それでも症状が改善しなければ、すぐに受診して下さい。

 この方法で症状が改善しても翌日に受診して下さい。心不全が悪化しているか検査して治療法を再検討します。

 退院時に比べて筋力がつき、日常生活の範囲が拡大しています。無理のないリハビリテーションを上手に実施した結果で大変よいと思います。

 現状のシャワー浴ではなく入浴を希望されていますが、上記のように利尿薬を減量しますので、入浴により心不全が悪化する可能性もあります。一度に多くの事を変更するとかえって治療に悪影響の出る場合もあることを御理解ください。

 認知機能に異常なく、うつ傾向も認めません。病気に対しての理解力もあり積極的な姿勢で治療に協力していただけるので主治医としても有難いです。

 次回受診予定の1か月後に脱水が改善し、心不全も悪化していなければ、再度入浴の相談をしたいと思いますので、この時まで現状と同様にシャワー浴でお願いします。​

付録

  • 入院時の評価例(老年医学会) (PDF)

  • 総合評価加算の施設基準に係る届出書 (PDFWord)

  • 入院診療計画書 (PDFWord)

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